オーガナイザーによる分科会紹介


「ヒトの感覚―運動系における先行制御と自己発現の起源」

オーガナイザー:石田 良(東京大・物理)

講師:沢田康次先生(東北工業・通信工)

 沢田先生は非平衡系理論・カオス・結晶成長とフラクタル等、様々な仕事をされてきましたが、その数理科学的なアプローチは普遍的で、生物物理を志す皆さん方にはとてもよい示唆となると思います。

 たとえば日経サイエンスで沢田先生の記事を読んだことがあるのですが、そのときは「ヒドラは、切断されても切半体から再生して2体のヒドラになる」という現象を捉えられて、生命体についての情報伝達について研究されていて、大変関心を持ちました(*1)。

 その沢田先生には今回は「ヒトの感覚―運動系における先行制御と自己発現の起源」についてのご講演を賜りたいと思ってます。人間の手が目標のものを追跡していくとき、その位相差がどのようになるかという実験は、人間の認知機構への数理科学的なアプローチとしても大変興味深く思います。また、沢田先生の、この問題についてのモデルにも大変関心があります。

 あと、この問題が実は「工学」と繋がっている、ということも僕の関心がある点なんです。というのはこの問題は「制御」という概念と密接に結びついているので。人間の手の追跡が、果たしてどのような「制御機構」に基づいているのか、ということは、いままでの制御とは一味違う制御機構を生み出すかもしれません。

 なかなかうまく説明できませんでしたが、所謂「生物物理」のイメージからはちょっと違った視点から生物物理を眺めてみたい、生物物理への新しいアプローチに興味がある、工学的応用に関心があるという方には是非お勧めです。たくさんの方に来ていただければ嬉しいです。